文士たちが育んだ文化が交差する活気溢れる大人の街
駅を挟んで南北に伸びるけやき並木、活気ある商店街、通好みの企画で愛好者を引きつける映画館や小劇場。阿佐ヶ谷は、多くの「顔」を持ち合わせつつも、緑も多いことからどこかのどかな大人の街。1922年のJR中央線の阿佐ケ谷駅開業や、その翌年の関東大震災によって人口が流入。多くの詩人や小説家などもこの界隈に暮らし始めたのです。
街の歴史
江戸時代には「阿佐ヶ谷村」、以降「杉並村」とも呼ばれていましたが、昭和に入り東京都が23区制になると杉並は区名となり、この町はまた阿佐ヶ谷と呼ばれるようになりました。駅名は「阿佐ケ谷」、住居表示は「阿佐谷」、話ことばや固有名詞では「阿佐ヶ谷」も存在し、ほかでは見られない文字使いの難しい町でもあります。
大正末期に始まり戦前に全盛を迎えた「阿佐ヶ谷会」は、1927年から荻窪に住み『黒い雨』などの代表作を持つ井伏鱒二が中心となり、中央線界隈に住む文士たちと将棋や酒食を楽しむ交流の会でした。また、北原白秋、太宰治、川端康成などの名だたる作家や詩人も阿佐ヶ谷を闊歩していました。
見どころ
阿佐ヶ谷といえば!阿佐ヶ谷姉妹
阿佐ヶ谷の名が全国に知られているとしたら、この二人の功績が大きいのかもしれません。阿佐ヶ谷に長く暮らし、コンビ名もかつて阿佐ヶ谷にあった鰻屋のご主人に提案されたものなので、ある意味で阿佐ヶ谷を象徴する存在といえるのではないでしょうか。街のあちこちには、二人の好きなスポットやお店などが点在しています。詳しくはぜひインタビュー記事をお読みください。
阿佐谷パールセンター商店街
JR阿佐ケ谷駅南口から徒歩1分、「阿佐谷七夕まつり」のメイン会場となることで有名な商店街です。現在は2代目となる白とピンクを基調にした明るいアーケードが設置され、毎日多くの買い物客で賑わっています。「阿佐谷七夕まつり」以外でも、「阿佐谷ジャズストリート」と同時開催する「ハロウィン仮装コンテスト」や「阿佐谷ワンニャン写真展」などのイベントも盛んです。
中杉通りのけやき並木
中杉通りとは、世田谷区から杉並区を経由して練馬区まで続く東京都道427号瀬田貫井線の中の、杉並区役所前~貫井二丁目までの区間を指す通りです。さらにその区間中、青梅街道との交差地点から早稲田通りとの交差地点の間約1.6㎞には、けやきの街路樹が整備されています。このけやき並木は、戦後復興中の1954年に119本が植栽されたのが始まりで、現在は東京でも最大規模のひとつに数えられています。
飲み屋街
「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」が行われていることからもわかるように、駅周辺には飲み屋街が広がっています。「ビール自慢の店」、「ワインの品揃えがバツグン」、「店主が気さくで話し好き」など、お店のバラエティも豊かなので、ゆっくり一人飲みでも、グループで盛り上がるのもOK。足しげく通える自分好みのお店を、ぜひ探してみてください。
【関連ページ】
大衆酒場の貫禄がなみじゃない!
音楽が響く夜の阿佐ヶ谷を地元ミュージシャンと飲み歩く
生ビールだけじゃない!色々なお酒で楽しむ新感覚餃子
阿佐谷北のおしゃれエリア
ここ数年、阿佐ヶ谷の街でひっそりとオシャレなエリアに成長しつつある、駅の北側エリア。女性好みのカフェやスイーツ店、雑貨店、古着屋などが次々とオープンしています。お店の多くは、旧中杉通りにあたる松山通り付近に集まっていますが、お店がお店を呼び込む好スパイラルが出来上がっているそうで、これからも目が離せません。
【関連ページ】
『ことりっぷweb』編集部が案内する、ゆるりと歩く阿佐谷
阿佐ケ谷駅から阿佐谷北周辺エリアの大人のための夜の散歩コースを歩く
善福寺川緑地の桜
杉並区にはお花見の名所が数多くありますが、一番のおすすめは、東京ドーム約4個分の広さで約400本の桜が美しさを競う、善福寺川緑地。広い緑地の中でも五日市街道沿いの尾崎橋からの眺めは見逃せないお花見ポイント。両岸の桜が川を覆うように咲き渡って川面に映る様子は圧巻です。毎年4月最初の土日を含む金・土・日には、杉並区商店会連合会主催の「すぎなみ春らんまん祭り」が開催されています。
【関連ページ】
阿佐ケ谷駅から少し足をのばして、善福寺川緑地の桜を見に行く
善福寺川緑地・和田堀公園〜川と桜のある風景〜
人気の老舗和菓子店「うさぎや」2024年5月閉店
東京で美味しい「どらやき」といえば、真っ先に「うさぎや」の名前を思い出す方も多いでしょう。阿佐ヶ谷のほかにも上野、日本橋にそれぞれ同名の独立した店舗があり(いずれも親戚が経営)、まさに三者三様の魅力があります。阿佐ヶ谷では、「どらやき」以外に「うさぎ万頭」や日持ちのする「兎月最中」も人気で、どれも杉並土産の定番でした。
ラピュタ阿佐ヶ谷
多くのミニシアターが閉館に追い込まれている中、独自のセレクトで多くの映画ファンから愛されている映画館。座席数48席のラピュタ阿佐ヶ谷は、1950-70年代の日本映画を中心に企画が組まれます。DVD化されていない作品の上映も多く、幅広い日本映画が鑑賞できます。
暗渠(あんきょ)
河川や用水路を地下化し、蓋をして見えなくしたものを暗渠といいます。杉並区には、こうした「かつて川や水路だったところ」は多く存在しますが、阿佐ヶ谷エリアにも、荻窪の天沼弁天池公園を水源として神田川に合流する小さな河川・桃園川が流れていました。今日では一部が緑道として整備され、川を感じさせる様々な痕跡も残っているので、散策にもおすすめです。
【関連ページ】
ミュージシャン・原田郁子さんと歩く 桃園川暗渠と銭湯
阿佐ヶ谷神明宮
JR阿佐ケ谷駅北口から徒歩約2分、こんもりとした森の中に鎮座するのが、阿佐ヶ谷神明宮。全国でも珍しい災難厄事全てを取り除くという「八難除祈祷」を行なっており、地元住民だけでなく、国内外の観光客の参拝も多いそうです。境内にある能楽殿では、「観桜会」、「薪能」、「観月祭」などが催されます。「神むすび」と名付けられたカラフルなレースのブレスレット型お守りは、限定バージョンもあり大人気の一品です。
【関連ページ】
駅近のヒーリングスポット、神社で出会えるかわいいアイテムがなみじゃない!
中央線杉並4駅 の〜んびり神社さんぽ
篝火がはぜる、幽玄な薪能(たきぎのう)の世界 阿佐谷薪能
イベント
阿佐谷七夕まつり
1954年から開催されている歴史ある夏のイベント。毎年8月上旬に行われ、メイン会場となる阿佐谷パールセンター商店街では、アーケードの天井から「はりぼて」、「吹き流し」などの色とりどりの飾りが吊り下げられます。中でも、商店街の各店などが趣向を凝らした手作りの「はりぼて」は、その大きさに圧倒されます。昨今は阿佐谷地区の他の商店街も同時期にさまざまなイベントを行い、街全体がお祭りムードで溢れます。
【関連ページ】
イベント紹介:阿佐谷七夕まつり
阿佐ヶ谷の七夕まつりがなみじゃない!
阿佐谷ジャズストリート
10月末の秋空の下で行われる地域密着型のストリートジャズの祭典。トランペットやトロンボーン、クラリネットといった楽器を演奏しながら街を巡り歩く名物「ディキシーランドジャズウォーク」をはじめ、商店街やカフェ、居酒屋など、街のあらゆる場所がジャズの演奏会場となります。神社の能楽殿を会場に一流のジャズミュージシャンによる演奏もあり、街中がジャズのリズムに彩られる2日間です。
【関連ページ】
イベント紹介:阿佐谷ジャズストリート
阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り
毎年春と秋に開催されるはしご酒のイベント。「“一人飲み”のハードルを下げて、一人でも多く飲み屋さんに来てもらいたい」という思いが込められたイベントで、気になる参加店舗で購入したチケットを提示するとドリンク1杯目が無料で飲めるシステム。時間の許す限り何軒でもはしごできるので、お酒だけでなく新しい出会いも楽しめます。
【関連ページ】
イベント紹介:阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り
阿佐谷薪能
阿佐谷薪能は、5月に阿佐ヶ谷神明宮の能楽殿で行われる、能と狂言の鑑賞会です。2017(平成29)年に始まり、地元有志によるボランティアの実行委員会「あさがや能・狂言の会」が主催しています。薪能は夏の夜に篝火をたいて行う能楽で、平安時代が起源とされる神事・仏事。その神聖な儀式を現代の阿佐谷で楽しむことができます。
【関連ページ】
イベント紹介:阿佐谷薪能
東京新聞まち歩き企画
ストレイテナー・ホリエアツシさんと歩く
ロックバンド「ストレイテナー」のボーカル・ホリエアツシさんは、中央線エリアをこよなく愛するミュージシャン。4駅を独自の視点で巡る本企画にて、阿佐ヶ谷の様々なスポットに立ち寄りながら、ホリエさんならではの視点で街の魅力を紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連ページ】
JAZZを感じる、まち「気になる」、阿佐ヶ谷
マシンガンズ・滝沢秀一さんと歩く
お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんは、結婚を機に杉並区に住み続けるお笑い芸人。4駅を独自の視点で巡る本企画にて、阿佐ヶ谷の様々なスポットに立ち寄りながら、滝沢さんならではの視点で街の魅力を紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連ページ】
昔と今が隣り合う、懐かしくて新しい街、阿佐ヶ谷
ストレイテナー・ホリエアツシさんと歩く 第2弾
ロックバンド「ストレイテナー」のボーカル・ホリエアツシさんは、中央線エリアをこよなく愛するミュージシャン。4駅を独自の視点で巡る第2弾の本企画にて、阿佐ヶ谷の様々なスポットに立ち寄りながら、ホリエさんならではの視点で街の魅力を紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連ページ】
のんびりが心地良いまち、阿佐ヶ谷