ミュージシャン・原田郁子さんと歩く 桃園川暗渠と銭湯

杉並名物・金太郎の車止めの集中地点から天沼弁天池公園まで

そうです、金太郎の車止めがあるからなのです。すると原田さん、一目見るなり金太郎を真似たポーズを取ってくれました!

金太郎が描かれている車止めがあるのは、杉並だけ。金太郎に興味津々の原田さんに、この付近は金太郎が3基ほど設置されているエリアだということを、高山さんが自作の金太郎の分布図(杉並区内56箇所に設置されているすべての金太郎を写真とともにグーグルマップにプロットしています!)を使って教えてくれます。

金太郎は、設置場所によってイラストの表情のタッチなどが微妙に異なっていたりするそうです。金太郎巡りも、杉並暗渠ならではの楽しみですね。

これは近くの別の金太郎。昭和40年代後半頃から設置され始めているので、塗装が剥げてしまっていたり落書きをされてしまっていたりすることも。高山さん曰く、これは現存する56基の中で最も状態の良いものの一つだとか。

さあ、金太郎で大いに盛り上がったところで、散歩を続けましょう。

道々にマンホールがあれば、耳を傾けてみます。

道路の舗装具合に「あれっ?」と思えば、すかさず質問を投げかけます。

と、目の前に「ゆ」の文字が刻まれた煙突が見えてきました。そう、暗渠といえば、の施設ですね。今回はもう一軒、こちらの銭湯にもお邪魔します。

荻窪の地で70年近く営業を続ける、桃園川暗渠脇の「藤乃湯」です。創業は大正15年とのことなので、かなり歴史がありますね。

入口から裏に回り込んでみると、薪が山のように積まれていました。建築廃材を活用したもので、藤乃湯は今もこうして薪で湯を沸かしている貴重な銭湯なのです。

訪れたとき、ちょうど作業をされていた店主の藤田和男さん。薪を使うのは手間暇がかかりますが、重油に比べると燃料コストが安く済み、また湯あたりも滑らかになるのだそうです。

敷地内をあちこち案内いただきながら、東京の銭湯の戦後史から子どもの頃の桃園川の話まで、雄弁に語ってくれます。

排水の仕組みも丁寧に教えてもらいました。ここでは、使い終わった湯を単に捨てるのではなく、その熱を再利用して新たな水を温めるといった省エネルギーの工夫が施されているそうです。

中に入り、脱衣所の様子です。壁面のタイルやロッカー、マッサージチェアなど、どれも懐かしさに溢れています。

こちらもレトロな雰囲気の浴室内。銭湯の壁絵として、大海原に夕陽が沈んでいくような夕景が描かれているのは珍しい気がします。

原田さんからの希望で、いい感じのツーショット撮れました!

藤乃湯
住所 杉並区天沼2-17-20
電話 03-3391-0504
営業時間 15:40~24:00
定休日 土曜
設備 コインランドリー、駐車場、マッサージ機、気泡風呂、超音波風呂、座風呂、寝風呂、立ちシャワー、ボディーマッサージャー、ぬる湯

さて、いよいよゴールもすぐ目の前。「藤乃湯」を出て暗渠をさらに辿っていきます。

阿佐ヶ谷弁天池から始まった今回の散歩のゴール、杉並区立天沼弁天池公園に到着です。かつてここには、水が湧き出る「天沼弁天池」と呼ばれる池があり、それが桃園川の水源のひとつでもあったと言われています。

高山さんと吉村さんの解説もこれでおしまい。この弁天池周辺にも料亭などがあったけれど、他と比べて料金がべらぼうに高かった…などといった小ネタがどんどん出てきました。

ということで、当時の弁天池を模した人工池の前に再集合。ゴールを喜ぶポーズで「おつかれさまでしたーっ!」。

天沼弁天池公園
住所 杉並区天沼3-23-1
その他 園内に杉並区立郷土博物館分館あり

桃園川暗渠散歩の阿佐ヶ谷〜荻窪編、いかがでしたでしょうか。ここで最後に、暗渠マニアックスのおふたりもスタッフも大いに驚いたことを少々。
原田さんに今回のゲストをお願いした理由は冒頭のとおりだったわけですが、取材の最中、上京して初めて一人暮らしをした街が実は阿佐ヶ谷だったこと(その後も川の近くに住むことが多く、方南町や井草に住んだこともあったそう!)、さらに『緑道』という曲はその当時歩いた桃園川緑道がモデルだったことが判明しました。ええっ!! そ、そうだったのですか!?
杉並、そして桃園川と、そこまでご縁があったとは思いもよりませんでした。原田郁子さんは、まさにこの企画に登場いただくべき方だったと、改めて思う次第です。帰り際、「まだまだ歩き足りないなぁ」とおっしゃってくれていたので、ぜひ次の何かを企んでいきたいと思います。

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※本記事に掲載している情報は2020年02月03日公開時点のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。